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2009年11月28日 (土)

北村恭介VSひろやん4

タグホイヤーのカタログを眺めていた。CAV511B.BA0902のページだ。そのボリューム感がありながら、上品で美しい姿に魅了されている。59万。なんとかならないものか。財布からゴールドのクレジットカードを取り出し、キャシングすべきかと悩む。スムーズに返済ができるだろうか。考え込んでいるとドアフォンが鳴った。「開いてるよ」玄関がやや乱暴に開き、乱暴に閉まった。細身だが決して華奢ではない男が入ってきた。北村恭介だ。恭介はテーブルに置いてある、ホイヤーのカタログとクレジットカードを見て、「やめとけよ」と言った。「悩んでるんだ」「たかが時計だろ。時間さえわかりゃそれでいいじゃないか」「おまえだって、タグホイヤーだろ。スポーツエレガント。16年前の」「それは俺のせいじゃないな。俺はあんたが作ったキャラクターだ。しかも、安易に作者と同じものを身に付けている」「そうだったな。すまない」恭介は俺の正面に腰を降ろし、セブンスターに火を点けた。俺もつられてマイルドセブンに火を点ける。「禁煙したんじゃなかったのか?ブログでえらそうなこと言ってたよな」「まあ、それを言うなよ。やめられるもんなんらハナっからこんなヘビースモーカーになってないぜ」「それもそうだな」俺は煙を吐きながら、恭介を禁煙させるって話も悪くないな、と考えた。「なにニヤけてんだよ」「なんでもないよ。まあ、今のうちにいっぱい吸っとけ。ところで、今日は車で来たのか?」「俺は車を持ってるのか?そんな話はなかったと思うが」「持ってるだろ。北村恭介2でおまえは車を運転している」「そうだったかな。今日は歩きだ」「じゃあ、飲むか?」「やめとくよ。タビラを開けなきゃなんない」「意外と真面目なんだな」そう言いながら、恭介の責任感に感心した。「コーヒーくらいは入れるぜ」「すまないな。しかしよう、マスターに何があったんだ?前回の北村恭介14で血まみれになってただろ」「まだ何も考えちゃいないんだ。続きがあるかどうかもわからんし」「無責任だな」「誰にも迷惑はかけてないだろ」俺は自分のコーヒーにミルクと砂糖を入れた。恭介はブラックだ。恭介は汚すまいと、ホイヤーのカタログを閉じ、テーブルの下に置いた。俺は猫舌だが、恭介はそんな設定にはしていない。案の定、俺は口を付けずにいるが、恭介は何のためらいもなく、ひと口目をゴクリと飲んだ。「そんなことより、痩せたよな」「ああ。頑張ってんだ。ビリーズブートキャンプの成果だ。もっとも、油物は控えてはいるがな」「そりゃいい。でも、ビールは飲んでんだろ?」「それは止めらんねー」「だろうな」俺は2本目のマイルドセブンに火を点けた。すると、今度は恭介がつられてセブンスターに火を点けた。ゆっくりと煙を吐き出す。窓に目をやる。もう暗くなりはじめている。俺は腕のタグホイヤー・スポーツエレガントを見る。恭介と同じものだ。「店はいいのか?」「そろそろ行かなきゃな」恭介は残りのコーヒーを一気に流しこんで立ち上がった。「さあ、働いてくるか」「もめごとはやめてくれよ」「それはあんた次第だろ」恭介は玄関に座り込み、ワークブーツの紐を結ぶ。「何か用事があったんじゃないのか?」「たいした用事じゃなかったんだ。ただ、ブログ1周年おめでとう、って言いたくてよ」「なんだ、そうだったのか。俺が訊かなきゃ、言いそびれてたな」「俺もあんたに似て照れ屋なもんでな。何か文句あるか?」そういうと恭介は乱暴に玄関を開けて出ていった。

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02 北村恭介」カテゴリの記事

コメント

まだ腕時計あきらめてなかったのですね・・・。
頑張ってください!
無限の展開これからも期待しております。

恭介に先に買われないように!ご注意!

投稿: Fu- | 2009年11月28日 (土) 20時49分

Fu-さん
グランドカレラ。ふっふっふ。

投稿: ひろやん | 2009年11月29日 (日) 11時32分

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