NO.1にならなくていい
会議とは名ばかりで、やたらと人数が多く、しかもほとんどの時間が進行役の講演会みたいになっていて、僕は眠ってしまっていた。でも、いちおう机は7、8人のグループが4ブロックに別れ、意見交換ができるような並びになっている。これはあとで何かやらされるな、と予想のついたものの、あんな強烈な睡魔に襲われたなら、地獄のエンマ大王様であっても数秒で眠ってしまうだろう。
でもまあ眠ってしまってことに対し卑屈になることはない。なんせ中身の薄い講演会になってしまっているのだから。
ところが終盤になって各グループで討議することになった(なっていた?)。うーん、ほっとんど聞いていなかった。隣りに座る、やや長めの髪を今どきみずらしくビシッとバックに固めている僕より数年遅く生まれたであろう男は、配布された資料にメモ書きをしていた。まじめなやつだ。
そして討議。いくつか項目がありその中にから不要な(類似する)項目を削除し、追加すべき項目があれば加えて、さらに優先順位(重要順位)に並び替えよう、ってことをしようってことになった。何でもいいや。そのグループで最年少と思われる奴がここぞとばかりに進行役をかってでる。なんだか昔の自分を見ているようでちょっと恥ずかしい。そんでおかしなことに書記が最年長だと思われる、身なりのきれいなおっさん。僕なんて今日は現場抜けてきたから会社の制服(作業着)なのに。なんだかこっけいな役振りだな、とは思ったが、何もしなくていい僕は気にしないことにした。
でも、さすがに無言で過ごすってわけにもいかないだろうから、僕が口火を切った。うつらうつらと講演を子守唄のように聴いて、資料であげられいる項目の重要性について話しているんだなってことは、わっていた。だから、僕は「この⑤が最重要項目だと思いますが」と言った。根拠はあった。バックに髪を固める隣りに座るの男の資料には、この⑤のところに「NO.1」と書いてあったのだ。
ところが僕の発言のあと一瞬にしてツンドラになった。書記のおっさんは顎に手をやり、進行役は首を傾げる。髪型バック男は自分の資料に手を載せ、メモを隠す。ツンドラを破ったのはバック男だった。「優先順位は⑥②④①③で、⑤は③と重複した内容になるので外してもいいと思います」的なことをいった。すると一気にツンドラがサバンナになった。
確かに③と⑤はニュアンス的な違いはあれど、環境についてうたわれている。重複するのかもしれない。しかも今日は環境がテーマではない。製造過程におけるコストダウンが大きなテーマだ。つまり、環境問題を軽視するつもりはないが、③と⑤はテーマからは少しそれる。
いやいや、今の時代さぁー、環境問題なして企業はありえないでしょ。節電によるCO2削減はコストダウンにつながるわけだし。僕的にはなにより環境問題が優先なわけよ。地球人としてね。
なんてみっともないことは言わなかった。その後は黙っていた。意見に正解なんてないんだから、堂々と発言を続ければいいのだろうけど、僕のは意見ではなかった。バック男のメモを盗み見しただけだ。その後30分くらい、あいづちだけで僕は過ごし、名ばかりの会議を終えた。
しかし、気になるのは「NO.1」である。彼はなぜ⑤に「NO.1」と書いたのか。会社に戻ってからもその不思議は消えることはなかった。雑紙に、「NO.1」と書いてみる。3回書いてみる。
あーあーあー、そういうことね。わかったひといます?
っていうか、あくまでもこれは僕の推測の内からは抜け出せないんだけど、わかったよ。僕が見た彼のメモは「NO.1」じゃなかったんだ。
「NO!」(ノー!)
ね、ね、ね、ね。これだったら納得じゃない?でしょ?でしょ?でしょ?
なんだか推理小説みたいになっちゃった。でもね、まだまだ不思議だよね。「NO.1」だとか「NO!」彼はなんで◎○とか×とか△で書かなかったんだろうね。ここの推測をするためには、彼のことをもっと知らなければならない。僕はかれの名刺を取り出し、じっと眺めた。また会う機会があれば飲みにでも誘ってみよう。
※今回の記事は、概ね事実なのですが各所に、小さなシュチエーションのつくり替え、事象の誇張などがあります。何か文句ある?
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コメント
おもろい!!
よんでうこっちもスッキリしました(笑)
投稿: はははる | 2011年7月 9日 (土) 11時16分
はははるさんへ
ありがとうございます。
投稿: ひろやん | 2011年7月 9日 (土) 20時47分